Masuk青ざめるフィオーネの肩を抱えるように501号室の部屋に辿り着くと、すぐに彼女をベッドに寝かせた。「大丈夫か? フィオーネ」愛しい恋人の髪にそっと触れる。「ユリウスさん……。ごめんなさい……騒ぎを起こしてしまって……」フィオーネは青ざめた顔で謝罪してきた。「何故謝るんだ? それにしても失礼な老人だ。君の事を魔女だとは。アドラー城の話は真実かもしれないが、フィーネが魔女だと言う話を信じているなんて。第一君を魔女と言ったことは許せない」彼女の美しい黒髪を指ですきながら俺はフィオーネを見つめた。「……」フィオーネは青く美しい瞳で、少しの間俺を見つめていたが……やがて口を開いた。「ユリウスさん。私、疲れたので少し寝ますね。ユリウスさんも休んだ方がいいですよ? 今夜はアドラー城跡地へ行くのですから」フィオーネの言葉に戸惑った。機材は無駄になるけれども、俺はもうあの城跡地に行く気は無かったからだ。「え? あ……そうか、やはり行かないと駄目なのか……?」「ええ。……行かないのですか?」フィオーネはじっと俺を見つめる。「あ、いや……そう言う訳では無いんだが……てっきり、フィオーネが俺に憑りついている怨霊を払ってくれたとばかり思っていたから」するとフィオーネは首を振った。「いえ、まだ完全ではありません。今夜あの城へ行き、全てを終わらせるつもりです。あの城が呪われた大元を断ち切ります」「そんなことが出来るのか?」その言葉に目が丸くなる。「はい、出来ます。しかも……今夜が一番最適なのです」フィオーネはじっと俺を見つめる。その目には決意が見えた。「分った、君の言う通りにしよう」「でしたらユリウスさんも横になったほうがいいです」「あ、ああ。それじゃ」この部屋はシングル用だから生憎ベッドは一つしかない。「俺はこのソファで休むよ」そしてソファに移動しようとしたところ……。「……行かないで下さい」フィオーネに服の袖を掴まれた。「え?」「一緒に……隣で寝てくれますか……?」フィオーネの身体は何故か小刻みに震えている。「え……? けれど……」身体を休めろと言われているのに、フィオーネの隣で寝ようものなら俺の理性が持つはずがない。きっとまた激しく彼女の身体を求めてしまうに決まっている。「あ……それはまずいんだ……」「何故ですか?」
宿泊先のホテルに着いた頃、フィオーネは体調が悪そうに見えた。「大丈夫か? フィオーネ」「え、ええ……大丈夫よ……」けれど彼女の顔色は青ざめ、元気が無い。「部屋で休んだほうがいいな」「……ええ」短く返事をするフィオーネ。「ホテルの部屋の鍵を取ってくるから、ここで待っていてくれ」窓際置かれた大きなソファの上にフィオーネを座らせると受付カウンターへ向かった。「ユリウス・リチャードソンです。501号室の鍵をお願いします」フロントマンに声をかけた。「はい、リチャードソン様ですね? どうぞこちらになります」カウンターにキーを置いたフロントマンは小声で俺に尋ねてきた。「それで……アドラー城の呪いの方は……大丈夫だったのでしょうか……?」「ええ、お陰様でこの通り元気ですよ」「そうですか、それなら良かったです。ごゆっくりどうぞ」「ありがとう」そしてキーを受け取り、フィオーネの元へ向かおうと振り向いた時。「え? 誰だ? あれは……」フィオーネの正面には何処かで見覚えのある初老の男性が立っており、何かを話しかけている。男性の顔は青ざめている。「すみません、彼女の連れの者ですが……何かあったのですか?」急いでフィオーネの元へ行き、彼女の背後に立つと紳士に尋ねた。「ユリウスさん……」フィオーネの顔は青ざめたままだ。「何だ? 君は……この人物の連れなのか?」「え? ええ……そうですが……」首を傾げながら返事をする。「な、何ですと! あ、貴方は……この人物が何者か知らないのですか!?」紳士は顔を真っ赤にさせ、震えながらフィオーネを指さした。「ま、待って……やめて下さい……」フィオーネは益々青ざめ、紳士を止めようとしている。「この女は……魔女ですよ! お、恐ろしい魔女……フィーネ・アドラーです!」紳士は大きな声でフィーネを指差し、辺りにいた人々の視線は俺たちに集中している。「何を言っているのですか? 貴方は……」彼の話に半ば呆れながら俺は言った。「彼女のどこが魔女だと言うのです? 第一フィーネ・アドラーと言う魔女は300年以上昔の話ですよね? 魔女が今もこの世に存在しているはずが無いでしょう?」「貴方は何もご存知ないからだ……あれは今から60年以上昔のことだが、今でもはっきり覚えているぞ?お前は隣町でピアニストをしていただろ
「フィオーネ、今日も占いの仕事があるのか?」すっかり恋人同士の気分になっていた俺はフィオーネと2人、ホテルのカフェで朝食をとりながら尋ねた。「え、ええ。でも……もう、そんなことしなくてもいいのだけど……」フィオーネはスープを飲みながら返事をした。俺はその言葉を前向きにとらえていた。「ああ、そうさ。もう無理に働く必要は無い。俺はルポライターだけど、ミステリー小説家でもあるんだ。こう見えても結構売れっ子なんだ。フィオーネを養ってあげられるくらいの貯蓄はあるから安心していいからな?」聞くところによるとフィオーネには身寄りが無いらしい。つまり、家のしがらみが何も無いということだ。「え? ユリウスさん。今の言葉の意味って……?」フィオーネが俺を見て首を傾げた。……本当になんて愛らしい女性なのだろう。彼女を見ているだけで、愛しさが込み上げてくる。恋人同士になれたことが今でも信じられなかった。「ユリウスさん?」再度、フィオーネが俺の名を呼び……我に返った。「あ、ああ。ごめん……フィオーネがあまりにも美しいから、思わず見惚れてしまったんだ」素直に自分の気持を語ると、フィオーネは頬を赤く染めた。「そ、そんな……美しいだなんて……」「本当だよ。俺は今までの人生で君程美しく、ミステリアスな女性を見たことがない。それで、さっきの話の続きだけど……フィオーネ。俺と一緒に暮らそう」テーブルの上に乗せた彼女の細く、白い手に自分の手を重ねる。「え? い、一緒に暮らすって……?」「うん、俺はルポライターにミステリー小説作家だから、特に何所かに定住する必要は無いんだ。フィオーネは俺に言っただろう? 一つの所には長くとどまることが出来ないって。まさに俺みたいな男がフィオーネにはぴったりだと思わないか?」他の誰にもフィオーネを奪われたくなかったので、つい強気な発言をしてしまった。「ええ……そうね……。なら、これからよろしくお願いします」フィオーネは頭をさげてきた。「え……? 本当に? 本当にこれから一緒に暮らしてくれるのか?」「……はい」嬉しくて、頷くフィオーネの手を再度強く握りしめた――**** フィオーネとアドラー城跡地に向かうのは20時。それまでの時間を恋人同士として彼女と過ごしたかった。そしてフィオーネに尋ねた。何所か行きたい場所は無いかと…
明け方―― 俺とフィオーネは一晩中、互いの身体を求め合い……今、彼女は疲れ切った様子で俺の腕の中で静かに寝息を立てている。フィオーネを抱いたからだろうか……?疲れてはいたものの、あれ程どうしようもなく寒気が酷かった身体は元通りになっていた。「フィオーネ……愛している……」長い黒髪にそっと触れ、眠っている彼女にキスするとフィオーネは目を覚ました。「あ……ユリウスさん……。体調の方はどう……んっ」俺はまだ話そうとしていた彼女の唇をキスで塞ぎながら囁く。「ありがとう。フィオーネのお陰ですっかり体調は良くなったよ」彼女の細い身体を強く抱きしめた。「フィオーネ……こんなことになって、順番が逆になってしまったけど……君を愛している。俺の恋人になって欲しい」そしてさらに強く彼女を抱きしめる。「え……?」フィオーネの身体がピクリと動いた。「ユ、ユリウスさん……。い、今何て言ったのですか……?」「何度でも言うよ。俺は君を愛している。どうか恋人になって欲しい。……大切にするから」愛しい彼女の髪を撫でながら耳元で囁く。すると彼女は俺の腕の中で首を振った。「駄目です……それは……無理です……」「え……? 何だって……?」その言葉に耳を疑った。「何故だ? 君も……俺のことを少しは思ってくれていたんじゃなかったのか? だからこそ初めてだったのに、俺に……全部捧げてくれたのだろう?」フィオーネは男を知らなかった。それなのに怨霊に憑りつかれた俺を救う為にその身体を捧げてくれた。それだけでも彼女を愛する理由として十分だった。しかし、フィオーネは悲し気に首を振る。「いいえ……違います。私は……私の罪のせいで、あの怨霊を作りだしてしまいました。そしてあの土地は呪われてしまったのです。今まで多くの人達がアドラー城の呪いに触れて死んでいきました。けれど私には……どうすることも出来ませんでした。もっと早くに知っていれば……助けてあげることが出来たのに……」彼女は俺の腕の中ですすり泣いている。「……」フィオーネの長い黒髪に触れながら黙って話を聞いていた。「わ、私は……ある事情から……一つの所には長くとどまることが出来ないのです。今回は久々にこの国に戻ってきました。そして……ユリウスさん、貴方にお会いしたのです。アドラー城の怨霊の呪いに触れてしまった貴方
フィオーネの唇は、とても甘かった。貪るように唇を重ねながら1枚ずつ彼女の服を脱がしていく。「んっ……んんっ……」真っ赤になりながらも俺の舌を受け入れるフィオーネの姿に、増々煽られる。互いに言葉を交わすことなく、キスを交わし……彼女を全裸にしたところでようやく唇を離し、フィオーネを見つめる。オレンジ色のライトにぼんやり照らされたフィオーネの裸体。真っ白な肌に形の良い胸。くびれた腰に、折れそうなほどに細い手足……。彼女は顔だけではなく、スタイルもとても美しかったのだ。「フィオーネ……とても奇麗だ……」するとフィオーネは恥ずかしいのか、真っ赤になる。「あ、あんまり見ないでください……は、恥ずかしいので……んっ」再び唇を重ね、彼女の唇を塞ぐ。「んっんっんん……」舌を絡めとる深いキスをしながら、彼女の肌に触れていく。柔らかな胸を揉みながら、薄く色付く先端を口に含んで舌を這わせる。「ん……はぁっあっあっあぁん……」フィオーネの肌が熱を持ち、バラ色に染め上げていく。……俺に感じている。自分が呪いに蝕まれているという状況なのに、嬉しくてたまらない。そっと下腹部に手を触れてみた。「んんっ!」フィオーネの身体がびくりと跳ねる。彼女はシーツを濡らすほどに潤っていたのだ。何て感度がいいのだろう。「フィオーネ……」身体をずらし、フィオーネの下腹部に顔を埋めると、最も感じる部分を舌で舐めあげた。「ああぁっ!」先程以上に甘い声を出すフィオーネ。もっともっとその甘い声が聞きたい。彼女のナカに舌を差し込み、内壁を舐めあげるとフィオーネは涙を浮かべながら身体を震わせる。「あ……あっあっあぁん……そ、そこ……は……あっああっ……だ、駄目……わ、私……へ、変になっちゃ……」「奇麗だ……フィオーネ。もっと……もっと乱れた姿を見せてくれ……」舌を這わせながら懇願すると、快感を逃す為なのだろう。「い、いやあ……そ、そこで喋らないで……」フィオーネが首を左右に振る。そろそろ限界が近いのかもしれない。後から後から溢れ出てくる彼女の甘い蜜を味わいながら、フィオーネが感じる部分を口に含んで吸い上げた。「ああんんっ!」ビクンとフィオーネの身体が弓なりにしなる。どうやら達したようだ。はぁはぁと荒い呼吸を繰り返し、ベッドに沈み込むフィオーネ。彼女を見
一体……何が起こっているんだ……?フィオーネは目を閉じ、柔らかな唇を押し付けている。甘く、魅惑的なキス。思わず、その感触に理性を失いそうになり……。「い、一体何するんですか!?」寸でのところで自分の衝動を抑え込み、フィオーネの両肩に手を置くと彼女を引き剥がした。「……」俺から引き剥がされたフィオーネは悲しげな瞳で見つめてくる。「……な、何故お、俺にキ……キスを……?」顔を真っ赤にさせながらも彼女に尋ねた。「すみません……もう、こうするしかないのです……貴方は呪いに触れてしまった。このままだと死んでしまいます。私は相手に触れる事によって怨霊の呪いを消すことが出来るのは……ご存知ですよね?」フィオーネの言葉にカフェでの出来事を思い出した。「あ……そ、そう言えばそうでしたね」彼女は俺の両手に触れて、怨霊の気配を消してくれた。「あの時の怨霊と、先程貴方がエレベーターで遭遇した怨霊とではレベルが違いすぎます。彼らは最も恐ろしい怨霊なのです」「え!? 気付いていたのですか!?」てっきり気を失っていたと思っていたのに?「あの時、私の意識はありませんでしたけど……彼等の気配は分りましたから。あの怨霊の血を、貴方は受けましたね?」「え……? 血……? そ、そうだ! 俺はエレベーターの中で血を……!」あの時の光景を思い出すだけで身体が恐怖で震える。しかし、今の自分の身体には血で汚れた後は何所にも残されていない。「怨霊の血は普通の人には視えないものです。ですが私には視えます。貴方の身体には今も彼らの血が身体に付着しています。怨霊に触れてしまった証拠です。このままでは……間違いなく今夜中に憑り殺されてしまいうでしょう」フィオーネは顔色一つ変えずに説明する。「そ、そんな……。い、一体あの怨霊たちは普通の怨霊とどう違うと言うのですか?」「それは後程説明します。今は一刻も早く怨霊たちが最も時間を強める深夜0時になる前に、貴方に憑りついた怨霊を消し去らないといけません。そうしないと私は貴方を助けることが出来なくなるかもしれません」「け、消し去るって……ど、どうやって……」ま、まさか……?ゴクリと息を飲む。「はい。私と……身体を重ねることです」フィオーネは初めてここで顔を少しだけ赤らめさせ、俯いた。「え!? じょ、冗談ですよね!?」予想は